明治日本の産業革命遺産、世界遺産へ 軍艦島など8県23資産
政府に4日入った連絡によると、幕末から明治の重工業施設を中心とした明治日本の産業革命遺産(福岡など8県)の全23施設を世界文化遺産に登録するよう国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が勧告した。7月3~6日にドイツのボンで予定されている
「世界遺産委員会」の審査で正式に決まれば、「富士山」(山梨、静岡)、「富岡製糸場と絹産業遺産群」(群馬)に続き3年連続で、日本の世界文化遺産は15件目となる。
産業革命遺産は、「軍艦島」の通称で知られる端島はしま炭坑(長崎市)などで構成。官営八幡製鉄所(北九州市)や三菱重工業長崎造船所(長崎市)が導入し、100年以上にわたって稼働し続けている施設が含まれる。
諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)は、「西洋技術を積極的に改良して日本のニーズや伝統に適合させ、わずか50年余りという短期間で本格的な産業化を達成した」と歴史的な価値を評価した。
「九州・山口と関連地域」とのサブタイトルを「製鉄・鉄鋼、造船、石炭産業」に変更し、老朽化が進む軍艦島の保全対策などを2018年の世界遺産委で報告することも求めた。
世界遺産委では日本やインド、ドイツなど21の委員国が合議し登録の可否を決める。
日本が推薦した候補で過去に登録勧告が覆された例はないが、今回は委員国の韓国が、「朝鮮半島出身者を強制労働させた施設がある」と反対しており、審議が紛糾する恐れもある。
推薦は各国年1件と定められているため「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎、熊本)と競合したが、菅義偉官房長官の裁定で産業革命遺産を優先。
政府は昨年1月に推薦を閣議了解し、国を挙げて登録を目指す姿勢を強調した。「長崎の教会群」は来年に登録審査を受ける。
西村幸夫日本イコモス国内委員会委員長
幕末から明治の日本は、欧米列強の圧倒的な力を前に、「植民地にされてはいけない」との危機感から国主導で産業の近代化を進めた。
推薦書でこうした独自のストーリーをうまく描けたことが、登録勧告につながった。
ただ23の構成資産には脇役と見える送水施設や燃料の供給施設なども含まれ、一般の人には全体のストーリーが見えにくい。
分かりやすく説明する工夫と努力が必要だ。
個々の施設が全体の中で果たした役割を解説できる人材を育てていく必要もあるだろう。
| 固定リンク
コメント