富岡製糸場と絹産業遺産群、世界文化遺産へ イコモスが勧告
文化庁は26日、群馬県の「富岡製糸場と絹産業遺産群」の世界文化遺産登録を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が勧告したと発表した。6月15~25日にカタールで開かれる世界遺産委員会で正式に決まる見通し。国内14件目の世界文化遺産となる。
自然遺産も含めた世界遺産全体では国内18件目となる。
世界文化遺産は登録数の増加に伴い審査が年々厳しくなっているとされるが、ユネスコの諮問機関は、「19世紀末期に養蚕と生糸産業の革新に決定的な役割を果たし、日本が近代工業国に仲間入りする鍵となった」と歴史的な価値を高く評価した。
文化庁は推薦理由に挙げた、「西欧の技術を導入して、国内で養蚕・製糸技術を改良し、世界の絹産業の発展と消費の大衆化をもたらした普遍的な価値」がほぼ認められたとしている。
勧告は、遺産の保全や管理についても適切とした。富岡製糸場では、製糸作業の中心となった「繰糸場」など明治初期の建造物が良好な形で残されている。政府は07年、世界文化遺産の国内候補としてユネスコの「暫定リスト」に記載。昨年1月に正式推薦した。
ユネスコ諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)は登録の可否を判断するため、現地調査するなどして審査していた。
構成資産は、官営製糸場として1872(明治5)年に設立された「富岡製糸場」と近代養蚕農家の原型「田島弥平旧宅」、養蚕技術の教育機関「高山社跡」、岩の隙間から吹く冷風を利用して蚕の卵を貯蔵した「荒船風穴」の4カ所。
世界遺産
貴重な遺跡や生態系などを人類共通の財産として後世に伝えるため、世界遺産条約に基づきユネスコが登録する。文化遺産、自然遺産、複合遺産の3種類がある。「顕著な普遍的価値」に加え、保護措置が十分に整っていることが登録の条件。
昨年6月の世界遺産委員会終了時点で、総数は981件、このうち文化遺産は759件。国内では文化遺産13件、自然遺産4件の計17件が登録されている。
祭礼や芸能、社会的慣習などが対象の「無形文化遺産」、古文書や記録を保護する「記憶遺産」と併せ、ユネスコの三大遺産と呼ばれることもある。
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