革新的エネルギー・環境戦略、30年代の原発ゼロ社会へ
政府が14日発表した30年代の原発ゼロ社会をめざす革新的エネルギー・環境戦略で、核燃料サイクルの継続方針が示される一方、建設中の大間原発と東京電力東通原発1号機の行方は明示されなかった。青森県の関係者からは、安堵と不安の声が交錯した。
「核燃料サイクルのことや、使用済み核燃料の最終処分のことなど、様々なことを明日、枝野幸男経済産業相に聞きたい。具体の話はそれから…」
三村申吾知事は14日夕、知事室前で報道陣に囲まれた。懸案だったサイクルは、「引き続き従来の方針に従い再処理事業に取り組む」と継続方針が示されたこともあり、やや温和な表情。
新戦略については、15日に予定される枝野氏との会談後にしたいと評価を避けた。
一方、手放しで喜んだのが再処理施設がある六ケ所村の古川健治村長だ。「評価したい」。国から送られてきた資料に目を通すと、開口一番、集まった報道陣にそう語った。「ひとまず安心した」とも付け加えた。
一定規模の原発数が必要な核燃料サイクルと、原発ゼロ社会をめざすことについては、矛盾も指摘されている。
古川村長は、「新戦略で、従来の方針に従うと言っている以上、少なくとも1、2年で見直されるようなことはない」「矛盾と言われると思うが、各原発で再処理した燃料をどの程度使うかなど、今後、政府によって内容が詰められていくと思う」と話した。
六ケ所村議会が、サイクル撤退なら使用済み燃料の村外搬出を求める意見書を採択していたことにも触れ、「そのような最悪な事態を招きたくないと願っていたが、今回の決定では、それがある程度認められた」とし、村外搬出を求めない姿勢を示した。
使用済み核燃料の中間貯蔵施設が建設中のむつ市の宮下順一郎市長は、「核燃料サイクルにおける貯蔵施設の位置づけと見直しを国に確認したい」とし、「再処理前提のものしか受け入れられない」という従来の姿勢を強調。
六ケ所村で核燃料サイクル事業を進める日本原燃の川井吉彦社長は、サイクル継続の方針に、「重く受け止める」。原発ゼロ社会をめざす方針には、「極めて遺憾。原子力は引き続き大切なエネルギー源。新戦略は絶えず検証し、不断の見直しが必要と考える」。
むつ市のリサイクル燃料貯蔵(RFS)の久保誠社長は、「原発は重要電源として極めて重要。核燃料サイクルも、一貫性を持って進めることが重要」とコメントした。
新戦略は「原発の新増設はしない」を3原則の一つに掲げた。建設中の東京電力東通原発1号機(東通村)と、大間原発(大間町)が建設できない可能性も出てきた。
建設中の原発について、古川元久国家戦略相は14日の会見でも、「(新増設はしないという)原則についての具体的な運用は今後の検討課題」と言葉を濁した。
大間原発などができれば30年代の原発ゼロの達成は困難になるが、国家戦略室の幹部は、「40年の寿命が来ていない新しい原発をどう止めていくのかはこれからの検討課題で、明示していない」とあいまいだ。
東通村の越善靖夫村長は、「これほどまでに立地地域への配慮にかけた、根拠のない実現性に乏しい政策は到底受けいれられない」と痛烈に批判。用意したメモはA4判1枚ながら、文字は不満をぶつけるように裏表にびっしり。
越善村長は、まず決定までのプロセスに立地地域や経済界の意見が軽視されており、原子力に否定的な発言や感情論が際だっていると批判。
村が原子力行政に協力してきた40年超の苦労に触れ、「そういった歴史や思いが全く無視されていることははなはだ遺憾」などと述べた。また、東電の東通原発1号機について、「既に着工しており、(新増設しないという)新規にあたらない」とした。
大間町の金沢満春町長も険しい表情。大間原発は工事の進捗率が40%近くあり、関連工事も含めると進捗率は60%に達しているとし、
「(建設しないという)新規ではないと受け止めている」と主張した。
| 固定リンク
コメント