歌人の河野裕子さん、死去 迢空賞など受賞
女性の身体や感性をしなやかに詠みあげた、戦後生まれを代表する歌人河野かわの裕子ゆうこ(本名永田裕子)さんが12日午後8時7分、乳癌のため死去した。享年64。熊本県生れ。京都女子高校、京都女子大文学部国文科卒業。
青春の恋愛歌をおさめた第1歌集森のやうに獣のやうにのほか、ひるがほで現代歌人協会賞、桜森で、現代女流短歌賞を受け、現代の女性歌人の第一人者となった。
○たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに 私をさらつて 行つてはくれぬか
○たつぷりと 真水を抱きて しづもれる 昏き器を 近江と言へり
○君を打ち 子を打ち灼ける ごとき掌よ ざんざんばらんと 髪とき眠る
言葉の力強さを大胆に打ち出す作風で知られ、恋愛、結婚、出産、子育て、闘病、母の介護など、女性の人生をモチーフに詠み続けた。
母の最期をみとる歌集母系で09年、歌壇で最も権威のある賞といわれる迢空賞と斎藤茂吉短歌文学賞をダブル受賞した。
夫の和宏さんが編集発行人を務める歌誌塔で活躍。おしどり歌人夫婦で知られ、ともに宮中歌会始の選者。長男の淳さん、長女紅さんも歌人。
10年前に乳癌を患って手術した。その後、再発し、癌と闘いながら創作活動を続け、毎日新聞の歌壇選者を務めていた。
「自分が歌を作り始めたころから活躍されていて、大きな目標だった。女性らしさを肩ひじ張らず、おおらかに自信を持って表現されたのは、すごく新しかった。恋や命を育む母など女性ならではの歌を作ってこられた。本当に残念です」俵万智さん。
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