天平美術を守り続けてきた東大寺・正倉院 その風雪
天平美術を守り続けてきた奈良東大寺の国宝正倉院は意外なほど丈夫だった。1日の専門家視察でも屋根の傷み以外に特段の指摘はなく、かえって大正時代の修理の巧みさが評価された。
報道公開された内部も、屋根を支える小屋組の頑丈さが印象的。校倉建物は南北約33m、東西9.4m、高さ約14m。2.7mの高さにある扉につながる仮設階段を上り、2階建てになった内部の1階部分へ入る。
「仏堂ほどの良材を使っていない。やはり倉庫だという印象」と専門家懇談会の鈴木嘉吉座長が言うとおり、頭上に見える2層目の床板の裏側や柱の仕上げは粗削りだ。
内壁には鎌倉時代の落雷で焼けこげた跡も残る。それでも大きな揺れやきしみは感じられず、上質のヒノキ材が使われた倉の強度がうかがえた。
古代の木造建築は100年に1度の小修理、数百年ごとの解体修理で命を保つ。
この校倉も古代から何度も補修を受けた。
屋根を支える小屋組は「大正貮(に)年補」の焼き印がある新材が目立つ。
材を三角形につないで強度を増す西洋建築のトラス構造が導入されており、約1250年前の古材を支えていた。
しかし、近年屋根のたわみや瓦の割れなどが目立ってきたため、この時の修理が万全だったのかという疑問の声もあった。
「視察した限りでは、大正の修理は功績の方が大きい感じ。委員からは大規模修理をしなくてもいけそうだという意見があった」鈴木座長。
問題点は瓦だった。しみ込んだ水分の凍結・融解で瓦が割れ、雨水が屋根材にしみ込みやすくなってきた。11年度からの修理では、約3万枚の瓦のほとんどすべてを換えることになりそうだ。【アサヒ・コム】から
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